渡辺明応とのプロジェクトについて
2014年、市川の路上で結成したhomesteelは、私(key)と渡辺明応(steelpan)とnello(per)の3人がメンバーで、作品制作を少しずつ進めていたものの、メンバーの都合が合わないため、作業は私のPCの中だけでささやかに行われている状態となっていました。つまり私一人で温めていたのです。
しかし、コロナウィルスの影響で、演奏活動に忙しかった渡辺明応(steelpan)が製作にあてる時間が確保できるようになり、別件で"studio n'sawa-saraca"で会うことも多かった為に、2人で共同作業をするようになりました。
渡辺明応の自宅で録音したsteelpanのファイルを送ってもらったり、私が送ったトラックファイルを渡辺明応が編集したりしながら、デモを作成しているうちに2人の共同プロジェクト的な内容になってしまったので、homesteelとは切り分けて、発信していくことになりました。
homesteelはまた3人で出来るようになった時にやろうと。
2020年中に8曲出来たので、2021年から1曲ずつ公開していくこととにしました。
発信方法としては、私としては、n’sawa-saracaがレーベルから発売された事でそれなりの反応があった経験から、このプロジェクトも何処かのレーベルに頼ろうと思っていました。
しかし、渡辺明応は自主制作&自主サブスク配信を主張。
彼自身はその方法で、実際にspotifyで月間23,000人ものリスナーがいるのです。
そして、彼が関わっているいくつかのプロジェクトも多くの視聴者がいますが、特にレーベルに頼っているわけでもなく、更に驚いたことに、直接会ったことがない人とのプロジェクトもあるというのです。
本当に驚きましたが、これが今の感覚なのだなと思いました。
今は自分たちで好きなように作ったら、直接、世界に届けられるツールがある時代。その世界ではレーベルとか国とか、人種、性別も関係ない世界だということもわかって来ました。
そのうち需要が出て来たら、レーベル等と絡む時が来るのかも知れないし、その時に考えれば良いのでは?
ということで、今なのだから、今の時代感覚を持った彼のアイディアに乗ることとしました。
結果としては、第1弾のfluta dolceは、spotifyで公開から約1ヶ月で再生数10,000回を突破、公式プレイリストRoad Trip To Tokyoやjazzanovaのプレイリストにも選曲されました。
youtubeでも公開されています。
第2弾のdaytime moonも初日から公式プレイリストに選曲され、2日で1000回以上の再生数に。
youtubeではこちら
というわけで、現代に追いつくための最終列車(特別臨時運行)になんとか飛び乗れたような感じです。
この事がなかったら、時代に着いていけず、存在すらできない表現者になってしまうところでした。
そんな流れもあり、長年、密かに拘っていたガラパゴス携帯やCDヲークマンからも卒業して、12/28からスマホユーザーに。
サブスクの世界にも、すっかり慣れることが出来ました。
インターネットを使用して共同作業したり、発信したりして、それを地球のどこかで誰かが受け止めて何かを感じる。
国境も人種も関係なくて、発信したい人は発信するし、探している人は自由に探して、マッチすればそれで良いじゃないかと言う事ですね。
インターネットの恩恵で、表現者にとっても、受け手側にとっても、自由で良い時代になったとも言えると思います。
コロナウィルスの影響で社会の形態も変わって、当然失ったものも大きいですが、価値観が変わったことで、無駄なものが無駄だと明確に識別できるようになったことは大きいと思います。
そして余計なバイアスがかからなくなることで、より物事の本質が明確にになったのだと思います。
表現する、作品を発信するという意味では、全てのボーダーを超えて、自由に情報収集も発信もできる良い時代になったと思います。
一方、リモートとか配信とは真逆で、人と人が触れ合う良さを実感する出来事もありました。
昔から続いている私のピアノトリオについては、予定されていたライブがありましたが、コロナウィルスの影響でお客さんも呼び難いということで、録音機材を持ち込んで自主録音をしました。
録音機材の持ち込みは、n'sawa-saraca 2nd の制作の時に常習化したので、問題なく行うことが出来ました。
もともとこのメンバーでのレコーディングをしたいと思っていたので、良いきっかけだったと思います。
唐沢寧pf 長谷陽介ds 和泉仁士bの3人でしか表現する事の出来ないピアノトリオの世界を今後も追求していきます。
そして、未だに忘れ難いのは、来日したRicardo Herz trioとのジョイントライブ!
これは、私の中高生の時の同級生、塩沢さんがブラジルに住んでいて、彼女からの連絡がきっかけで、実現することに。
このRicardo Herz trioは素晴らしかった!本当によかった。
高級で完成された芸術で、感動的だったし刺激的でした。
Ricardo Herz Trio
左:Michi Ruzitschka (7-string acoustic guitar)
中:Ricardo Herz (violin)
右:Pedro Ito (drums and percussion)
日本ではあまり話題にならなかったけど、コンスタントに来日していれば、Debora Gurgelのような存在になってbluenote tokyo等も満席になる日が来るのでは?と思いました。
しかし、共演したのは2月で、3月からコロナウィルスの影響が大きくなり、それどころではなくなった。
2月に共演できたのは、ある意味、タイミングが良かったとも言えます。
Ricardo Herz trioとは、satoshi&koheのメンバーとしてボサノバのスタンダードと、Ricardo Herz trioのレパートリー(難曲)を共演しました。
なんといってもリズムが凄かった。
今まで体感した事のない超高速ジェットコースターに乗ったかのようなスピード感や、空間の広さ、清らかさ、全てが気持ちの良いところに落とし込まれて、
良いリズムとはこういうものなのか、という事が体感できて、本当に本当に素晴らしい時間だった。
このような素晴らしい機会に恵まれることが出来て、きっかけを与えてくれた塩沢さんと、Ricardo Herz trioとの掛け渡しをして下さった鈴森さん、日本での実際の手配を具体的に取り持っていただいた、satoshi&koheの福田さんに感謝申し上げます。
というわけで、2020年は、大きく変化したし、とても内容の濃い年でした。
2021年も引き続き、良い年だったと思えるようにしたいと思います。
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