steelpan奏者=渡辺明応との共同プロジェクトでは、2021年に8曲をサブスクでリリースしました。
この度、その8曲をカセットテープに収め、4月9日より販売することになりました。
カセットテープは、私の小学生の時から付き合いは長いものの、時代の変化とともに、ほぼ無縁になっていました。
カセットデッキは辛うじて維持していましたが、カセットを再生することなんて1年に3、4回あるかないか・・・といった程度でした。
ところが、ここ何年かでLPとともに、カセットテープが若者に人気なのだと言います。
何でもかんでもスマホやPCの中で完結してしまう中で、単体の機械を動かして使うということ自体が新鮮だしお洒落に見えるのかもしれません。
現代版ポラロイドカメラ「チェキ」や、使い捨てカメラ「写ルンです」も若者に人気だと言います。
何事もスマホで解決してしまい、便利になりすぎると、味気なくなってしまい、今度は手間がかかっても、物体を味わい深いと感じて楽しむという、人間は身勝手で贅沢で、欲望には際限がなく、困った生き物です。
そして、私たちも困ったもので、例に漏れず、カセットテープの魅力を再認識し、形に残すならカセットにしようと発注したわけです。
そして、納品された製品を見て感激すると同時に、不思議な感覚に囚われてしまいました。
私の中では、カセットといえば、過去のもので古いものという認識なのに、納品されたもの(物体)は無傷の新品なのです。
そして、今回の渡辺明応との共同プロジェクトはLo-Fiをテーマにしてきました。
意図的にLo-Fiな音質を醸し出すために、ビンテージカセットテープレコーダー「デンスケ」を使用して、それを再度デジタル録音し、劣化させないように編集しました。
そして、そのデジタル音源をカセット製造の工場へ送って発注しているわけです。
シンセサイザーの扱いについても、ビンテージ機材を実際に使用することもあれば、DAWで最新のプラグイン を使用して、ビンテージシンセサイザーのLo-Fiな音を出すこともあり、それを劣化しないようにHi-F-な状態でファイルで扱うわけです。
つまり、Lo-Fiな機材をHi-Fiな環境で保存したり、Hi-Fiな環境でLo-Fiなサウンドを出して、それをHi-Fiな環境で扱い、最終的にはLo-Fiな媒体に落とし込んで、出来上がった物体は新品という、結局、Lo-Fiなのか、Hi-Fiなのか、何だか良く解らず、混乱し、本物、バーチャル、Hi、Lo、new、oldの区別すら解らなくなってしまったのです。
使い古された感じをハイクオリティに再現・処理した新品・・・
その新品から出て来る音は使い古された雰囲気のLo-FIサウンド・・・
Lo-FiサウンドがLo-Fiの代名詞であるカセットテープに高音質で録音されているのです。
さらに、スマホの中では、同じ内容はサブスクの中では無料で全部聴けてしまうわけです。
作った本人として、これが新しいか?古いか?とか、物として価値があるのか、無いのか?
考えてもわからないし、もう、考えても仕方がなくなってきました。
そして、そんなことは、どうでも良くなってきました。
とにかく、カセットテープが出来ました!
4月9日発売です。
また近くなったらご案内したいと思います。
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